11.12.日  
教育相談室
 昨夜未明の時雨から、またひとつ季節が進んだようです。今日は高気圧に覆われ風も穏やかな一日でしたが、頬に当たる空気が冷たく感じます。体育館の北から東側に並んでいるソメイヨシノの葉もいよいよ赤く降り落ちています。

 「秋山の 木の葉を見ては 黄葉をば 取りてそしのふ 青きをば 置きてそ歎く そこし恨めし 秋山われは(万葉集巻一16)」と額田王が春より秋がいいと詠ったのもわかる気がします。千年数百年も前の全く異なる時代に生きた人の感性が、自分の中にも同じようにあることが少し不思議にも思います。

 本校図書館の西隣に、「教育相談室」があります。その入口の扉には小さな木製のポストがかけられています。

 「人にはなかなか言えない、でも、だれかにこの辛い気持ちを分かってほしい…。」

 そんな気持ちも、いつの世に生きる人も、同じように心の中に持っているものかもしれないと思いました。

 誰かに聞いてほしい思いがある時は、言の葉にしてポストに入れてみるのもよいかもしれません。偶然ひらひらと舞い降りる紅葉が細長く口を開けたポストに入るように、秋はそんな気持ちにもなるものです。

 誰もが安全で安心して学べる学校になるように、自分が自分らしくいられるように、一人ひとりが互いに人を思いやる優しさを持てるようにと思います。