10.17.火  
悠以さんを迎えて
 今日の午後からは、全校生徒が体育館に集まり、シンガーソングライターで歌手の悠以さんの講演と歌を聴きました。

 悠以さんは、からだの性と心の性が一致しないトランスジェンダー(性同一性障がい)です。13日に事前学習として、LGBTや性の多様性について学びましたが、今日は当事者である悠以さんの話を聴き、悠以さんの思いを受けとめ、性的マイノリティについて当事者の思いになって考えます。
 悠以さんは、「性には、からだの性、こころの性、誰を好きになるかという性があり、私はからだは男性で、心は女性で、男性を好きになります。からだも心も男性で女性を好きになる、または、身体も心も女性で男性を好きになる人が多いので、この大勢の人たちを、あえて『ふつう』と言えば、そうではない人たちを『性的マイノリティ』といいます。人にはそれぞれにさまざまな性があり、その中にLGBTがあって、LGBT以外で悩んでいるマイノリティの人もたくさんいます。」と話されました。
 そして、「こころの性は決して変えることができないこと、性的マイノリティはさまざまな人がいてLGBTはその一部であること、からだの性は自分では決められないことをはじめに言っておきます。そのことを踏まえて今から自分の話をします。」と話されて、幼少の頃からの自分の話を、飾り言葉なくそのままに始められました。

 悠以さん自身の話は、ほんとうに悠以さんしかできない話でした。「違和感」「嫌悪感」「腑に落ちた」「今の自分を隠すための嘘」「過去の自分を隠すための嘘」「本当の自分を言う怖さ」「自分が自分らしく、ありのままの自分で」…。悠以さんの言葉の一つひとつに、その時の悠以さんの心が伝わってきます。私が産声を上げた時、「この子は女の子です」と医者が言っていたら、私はどんな自分でいたのでしょう。悠以さんには、悠以さんのすべてを受け入れてくれる「母」、理解ある「担任」、受け入れてくれる「仲間」がいました。私の場合も安心できる「ひと」が側にいるのでしょうか。

 高校を卒業して、ようやくスタートラインに立てたと悠以さんは言います。彼女の歌声は、驚くほど清らかで明るく伸びやかでした。圧倒的な歌唱力は生きる強さを感じました。自分が自分らしく生きることがいかに大切か、改めて思い知りました。
 互いに認め合いともに生きる、だれもが安心して自分のことが言える学校になるように、そんな社会になるように、すべきことはたくさんありそうです。
 悠以さん、ピアニストのタケムラさん、スタッフの皆さん、素晴らしい時間をありがとうございました。